故郷元くにもと)” の例文
「オオそうか。その性根たのもしい。——おぬしは何も知るまいがこれから故郷元くにもとのことども聞かせて進ぜるほどに、よう聞きなされ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「猿……。俺はな、誰にもいった事はないが、故郷元くにもとに不孝を重ねたままの母親を一人残してある。わしはもう一遍、その母親の顔を見られるだろうか?」
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女はただ——女ごころに——殊にそういうれがましい事は好きだし、又性来せいらいが勝気だし——一面には又、浪人して出て来た故郷元くにもとに対しても、ここで良人が
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おそれいりまする。……ところでご隠居様、これからお故郷元くにもとへお帰りで?」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有るのは、旧藩の江戸づめ知辺しるべだが、故郷元くにもとを追われたおれ達夫婦の事情を知っている奴等が、一両の合力ごうりきもしてくれる筈はなし——又そんな所へ恥曝はじさらしをして迄、出世に偓促あくせくしたくもない。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「小次郎どの。聞けばこの度は、いよいよ、生涯の大事にのぞむそうな。岩国の故郷元くにもとでも、えらい噂。じっとしているにもいられず、おもとの顔見に出て来ました。——ようまあ、ここまで立派に出世してござったの」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)