控鈕ぼたん)” の例文
只大臣の服には、控鈕ぼたんあな略綬りゃくじゅはさんである。その男のにはそれが無い。のちに聞けば、高縄の侯爵家の家扶が名代みょうだいに出席したのだそうである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
奥さんが、傍に這っている、絹糸を巻いた導線の尖の控鈕ぼたんを押すと、遠くにベルの鳴る音がした。廊下の足音が暫くの間はっきり聞えていてから、次の間まで来たしづえの御用を伺う声がした。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
同じ列の曽根の空席を隔てた先きに、やはり官吏らしい、四十恰好の、洋服の控鈕ぼたんの孔から時計の金鎖を垂らしている男が、さっき三味線を弾いていた、更けた芸者を相手に、しきりに話している。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)