掏児すり)” の例文
旧字:掏兒
然るに、天運の尽くるところか、その折、郁次郎の懐中物を狙っていた掏児すりがあったのです。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
掏児すりに取られたていにして届け出よう、そう為ようと考がえた、すると嫌疑けんぎが自分にかかり、自分は拘引される、お政と助は拘引中に病死するなど又々浅ましい方に空想が移つる。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
掏児すりみたいな眼つきの奴が、遥かに多いようだが、——かく、南方よりは人間もよほどすれていないし、二百から室のあるこのホテルも、冬の間は休業で、つい二週間前に開いたばかり
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
郁次郎がまことの悪人どもの謀主ならば、唖や掏児すりなどという小さな手先を破牢させるまえに、まっ先に、謀主たる彼をここから救い出す工夫をするのがあたりまえではないか。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最初は、その自白も疑ってみたが、彼の掏児すりであることは、いくらでも証拠だてられた。また、筋違御門すじかいごもんで編笠の侍から掏り盗ったという紙入れまで、そこへ、吐いて見せた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)