掃溜はきだ)” の例文
「しようがないねえ。また庭の先へ骨をほうり出して置いて……。お千代や。掃溜はきだめへ持って行って捨てて来ておくれよ」
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ア痛ッ。ア痛たたた。くそっ。負けるもんか。死にぞこないの掃溜はきだめ婆」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卯一郎 何時いつ客が来てもいゝやうにしといてくれ。部屋つていふもんは、片づいてるのが常態だ。いざつていふ時だけ片づけるなんて、それや物置きか掃溜はきだめのこつた。その書附けはこつちへくれ。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「お前とも永い御馴染おなじみだな。が、今日が御別れだぞ。明日はお前にも大厄日だ。おれも明日は死ぬかも知れない。よし又死なずにすんだ所が、この先二度とお前と一しよに掃溜はきだめあさりはしないつもりだ。さうすればお前は大喜びだらう。」
お富の貞操 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
庄太の家は露路の口から四軒目で、隣りの長屋にお作という娘が母のお伊勢と二人で暮らしていた。その奥は空地になっていて、そこには大きい掃溜はきだめがあった。
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
掃溜はきだめをあさりに来る犬もきょうは姿を見せなかった。空家を忍んで出た権太郎は、ぬき足をして稲荷の社のまえに行って、袂から鞴祭りの蜜柑を五つ六つ出した。
半七捕物帳:06 半鐘の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
庄太の云った通り、ぬけ裏のゆき止りを竹垣でふさいであったが、その古い竹はもうばらばらにくずれかかっていた。そばには共同の大きい掃溜はきだめがあって、一種の臭いが半七の鼻をついた。
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)