挺子てこ)” の例文
「ところでね、君このシャッターがちょっと妙でね、こう一々挺子てこで持ち上げるので不便なんだが、これを直して貰えないかな」
先生を囲る話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
これは物理学の挺子てこの原理というのです。この棒を長くすればするほど、どんな強い力でも出せるのです。井戸のポンプの柄と同じわけなのです。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
挺子てこでも動きそうもない様子であったが、外の二人も一と息入れたいところなので、ベッドの端に乗ったりして伸びていると、ものの十分とたたないうちに電話のベルが鳴り響いた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
店の間には南に四つと西に二つ、上下に開閉する硝子窓がついていた。この窓際には事務机が一脚えてあった。どっしりした黒光りのした代物しろもので、挺子てこでもこの場所を動かなかった。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
今、すゝを塗った紙を円筒に巻きつけて、それを規則的に廻転せしめ、運動する物体から突出した細い挺子てこの先をその紙に触れしめると、その物体の運動するに従って、特殊な曲線が白くあらわれる。
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
それから今度はなお膝まずいたままで、一本の挺子てこのようなものに、全身の重さと力をかけて、捻じ廻すような、りつけるような音もたてたが、最後にやはり大きな音を立てて、この仕事も終った。