持成もてな)” の例文
こは事難ことむづかしうなりぬべし。かなはぬまでも多少は累を免れんと、貫一は手をこまぬきつつ俯目ふしめになりて、つとめてかかはらざらんやうに持成もてなすを、満枝は擦寄すりよりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
地方にいる遊行女婦が、こうして官人を持成もてなし優遇し、別れるにのぞんでは纏綿てんめんたる情味を与えたものであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「こうしてそろって来て貰うことは、めったに無い」それを足立が言っていろいろと持成もてなしてくれた。思わず岸本は話し込んで、車夫を門前に待たせて置きながら、日暮頃までも話した。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
はじめの予定ではほんの一時間ぐらい見廻ってすぐに帰るつもりであったが、あまりに人なつかしく持成もてなされるので、高谷君も早くはてなくなって、いろいろの話に二時間あまりを費してしまった。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)