抱車夫かかえしゃふ)” の例文
女中が二人、書生が一人、老僕ろうぼくが一人、他に抱車夫かかえしゃふが一人という大家族であったので、家も相当に広く、間数がいくつもあって廊下ろうか続きになっていた。
田崎と抱車夫かかえしゃふ喜助きすけと父との三人。崖を下りて生茂った熊笹のあいだを捜したが、早くも出勤の刻限になった。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
宗助は剛情ごうじょうかぬ気の腕白小僧としての小六をいまだに記憶している。その時分は父も生きていたし、うちの都合も悪くはなかったので、抱車夫かかえしゃふを邸内の長屋に住まわして、楽に暮していた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その頃金富町かなとみちょうなるわが家の抱車夫かかえしゃふに虎蔵とて背に菊慈童きくじどうの筋ぼりしたるものあり。その父はむかし町方まちかたの手先なりしとか。老いて盲目めしいとなりせがれ虎蔵の世話になり極楽水の裏屋に住ひゐたり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)