“抬(もた)” の例文
夫の膝を右の手で揺り動かしつ掻(か)き口説(くど)けど、先刻(さき)より無言の仏となりし十兵衛何ともなお言わず、再度(ふたたび)三度かきくどけど黙黙(むっくり)としてなお言わざりしが、やがて垂(た)れたる首(こうべ)を抬(もた)げ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
だが、そろそろとその青かった月代が、胡麻(ごま)黒く伸びかかって来ると、やはりよくない。どうもよくない。極め付きのあの退屈が、にょきりにょきりと次第に鎌首を抬(もた)げ出して来たのです。
いきみ罷(や)むと、せいせい肩で息をして、術なげに手をもじもじさせていた。そして時々頭を抬(もた)げて、当てがわれた金盥(かなだらい)にねとねとしたものを吐き出した。宵(よい)に食べたものなどもそのまま出た。
黴 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
浅井が興奮したような顔を抬(もた)げて言い出した。
爛 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)