折革鞄おりかばん)” の例文
折革鞄おりかばんを抱え込んだ、どこかの中小僧らしいのが、隣合った田舎の親仁おやじに、尻上りに弁じたのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しゃ横縞よこじまはかま突張つっぱらかして、折革鞄おりかばんわきに、きちんと咽喉のどもとをしめた浅葱あさぎの襟を扇であおぐと、しゃりしゃりと鳴る薄羽織の五紋が立派さね。——この紋が御見識だ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そら忘物だ、」といって投出ほうりだして呉れたのは、年紀とし二十はたちの自分の写真、大学の制服で、折革鞄おりかばんを脇挟んだのを受取って、角燈の灯のとどかぬ、暗がりの中に消えてしまった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)