打割羽織ぶっさきばおり)” の例文
その平馬がいま打割羽織ぶっさきばおり野袴のばかま手馴てなれの業物わざものかんぬきのように差し反らせて、鉄扇片手に春の野中の道をゆらりゆらりと歩いて行くのだ。
平馬と鶯 (新字新仮名) / 林不忘(著)
床の間の処に縁取袴へりとりばかまを穿き、打割羽織ぶっさきばおりを着て腕を組んで頻りに考えて居るのが粥河圖書で、そばに居る千島禮三が
打割羽織ぶっさきばおりの見まわりだが、あの見廻りのお上役人だか、土地の世話役だかわからねえが、おいらの眼と鼻の先で、乙なことを言って聞かしてくれたっけなあ。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
徳川幕府が仏蘭西フランスの士官を招聘しょうへいして練習させた歩兵の服装——陣笠じんがさ筒袖つつそで打割羽織ぶっさきばおり、それに昔のままの大小をさした服装いでたちは、純粋の洋服となった今日の軍服よりも
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
以前の、御用提灯、打割羽織ぶっさきばおりには、さほど驚かなかったがんりきの百が、井戸側の蔭から、ひょろひょろと這い出して来たよた者に、まったく毒気を抜かれてしまいました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
斯様かように、柳の木の蔭で身体を平べったくしているとは知らず、その前へ順々に歩んで来たのは、陣笠をかぶり、打割羽織ぶっさきばおりを着、御用提灯をさげた都合五人の者でありまして、これはこのたび出来た
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)