打伏うつぶし)” の例文
それは、その翌日、殆ど全村を焼き尽したその灰燼くわいじんの中になかば焼けた少女をとめの死屍を発見した事で、少女は顔を手に当てたまゝ打伏うつぶしに為つて焼け死んで居た。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「だつて、仕様が無いんですもの。」とお節は打伏うつぶしのまゝ苦しさうに答へた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
女の顔は打伏うつぶしになつて、髪が長く乱れてゐるのにひきかへて、男は鬚のある顔を上に、胸がはたけて、白地の浴衣がぴたりとぬれてくつついてゐるのを袖子は見た。
磯清水 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)