手洗鉢てうづばち)” の例文
「お母の三味線はね、何時でも梅が枝の手洗鉢てうづばち、叩いてお金が出るならばを年ぢゆう、くり返してうたはすつた。」
(旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
お糸はどう骨を折つても、奧方を味方に引入れることが出來さうもないとわかつて、手洗鉢てうづばちの前で手を洗つてる奧方を、後ろからかゝへるやうにして胸を刺してしまつた。
お節は両手をうしろの首筋の方へ廻して細い黄楊つげくしで髪をときつけながら立つて居た。物置の戸口と柱一つをさかひにして小窓が切つてある其外には手洗鉢てうづばちが置いてある。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「奧樣は、御氣性がすぐれていらつしやいますので、夜中でも必ず外の手洗鉢てうづばちでお手を清められます。雨戸を一枚開けてあげますと、鞍馬石くらまいしの手洗鉢から、御自分で水をおくみになつて——」