のりうつ)” の例文
この院の夫人への大きな愛が御仏みほとけを動かしたのか、これまで少しも現われてこなかった物怪が、小さい子供にのりうつって来て、大声を出し始めたのと同時に夫人の呼吸いきは通ってきた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
矢庭に立ちあがると、悪魔がのりうつったようにキラキラと眼を光らせながら僧院クロアートルの廻廊へ走りこみ、沈黙の行をしている謹厳な修道士をつかまえ、裾から火がついたように夢中になっておしゃべりをする。
葡萄蔓の束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)