慌忙あわただし)” の例文
彼はたちままなこを着けて、木立は垣の如く、花は幕の如くにさへぎひまを縫ひつつ、しばらくその影をひたりしが、つひたれをや見出みいだしけん。慌忙あわただしく母親にささやけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
汗を流さんと風呂場に急ぐ廊下の交互すれちがひに、貫一はあたかもかの客の湯上りに出会へり。こたびも彼はおもてを見せじとやうに、慌忙あわただし打背うちそむきて過行くなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
身を起すとともに貫一は落散りたる書類を掻聚かきあつめ、かばんを拾ひてその中に捩込ねぢこみ、さて慌忙あわただしく座にかへりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)