ひき)” の例文
歴史は常に疾病によつて幸福が毀損され、不幸がひきおこされたことを記して、其の全紙を埋めて居る、と云つても宜しい程である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
兎に角此の二人は、他人の一身上に重大な關係をひき起すやうな記事を捏造する憎むべき新聞記者であつた。
そして何時の頃からか時々顔を合す機会のあった、おゆうの懐かしい娘姿に心がひきつけられた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その瞬間正三はぐんと自分の感情が嫂のほうへひきつけられるのを感じた。和田は相手の不愛相などは気にもとめず、窓からのぞきこむようにして、舌長に豹の逃げた顛末てんまつを話しだした。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一番轢殺れきさつ事故をよく起す粗忽そこつ屋でして、大正十二年に川崎で製作され、ただちに東海道線の貨物列車用として運転に就いて以来、当時までに、どうです実に二十数件と言う轢殺事故をひき起して
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)