悽然せいぜん)” の例文
堯はそれを読んである考えに悽然せいぜんとした。人びとの寝静まった夜を超えて、彼と彼の母が互いに互いを悩み苦しんでいる。
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
先生がひどく悽然せいぜんとした様子をしていらっしゃるのを見たため、先生を慰めるつもりで心にもないうそをついたのである。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
天皇之を聞こしめして、悽然せいぜんとして告げて曰く、ひとへに我が子の啓す所有り、誠に以て然りとすと、もろもろ采女うねめ等に勅して繍帷ぬひかたびらはりを造らしめたまふ。(後略)
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
竜之助は悽然せいぜんとして、この女の大胆なのに驚いたが、驚いて見れば何のこと、それはやっぱりあらぬ妄想、感が納まって夢に入りかけた瞬時の幻覚に過ぎないで、一間へだてた次の間では
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたくしはこの文を読んで悽然せいぜんとして涙なきを得なかった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)