悠然ゆつたり)” の例文
と菊池君は吃る樣に答へて、變な笑ひを浮べ乍ら、ヂロヂロ一座を見𢌞したが、私とは斜に一番遠い、末席の空席に悠然ゆつたり胡坐あぐらをかく。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
以前まへの室から、また二人廊下に現れた。洋服を着た男は悠然ゆつたりと彼方へ歩いて行つたが、モ一人は白い兎の跳る様に駆けて来ながら
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、菊池君は吃る様に答へて、変な笑ひを浮べ乍ら、ヂロ/\一座を見廻したが、私とははすに一番遠い、末座の空席に悠然ゆつたり胡坐あぐらをかく。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、眠気が催すまでに悪落着がして来て、悠然ゆつたりと改めて室の中を見廻したが、「敷島」と「朝日」と交代にしきりに喫ひながら、遂々たうたうゴロリと横になつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
長野の真赤にした大きい顔が、霎時しばし渠の眼を去らないで、悠然ゆつたりとした笑を続けさせて居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
入れとも云はず窓外そとを覗いてるので、渠は構はず入つて見ようとも思つたが、何分にも先程から氣が悠然ゆつたりと寛大になつてるので、遂ぞ起した事のない「可哀さうだ。」といふ氣がした。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
浮いたところのすこしもない、さればと云ツて、心欝した不安のさまもなく、悠然ゆつたりとして海の広みに眼を態度こなしは、雨にさらされ雪に撃たれ、右から左から風に攻められて、磯馴の松の偏曲ひねくれもせず
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
悠然ゆつたりと落着いて了つた渠の心は、それしきの事で動くものでない。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)