心恃こころだの)” の例文
ただ一つ心恃こころだのみなのは、能登守という殿様が、うちの殿様と違って、物事に思いやりのあるらしい殿様であることのみでありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……よもやと心恃こころだのみにしていたが、菩提山の半兵衛重治め、ついに、安土の命を奉じ、松千代様をお首にしてさし出してしまったらしい。……おれは、急にあのせ法師の半兵衛にあいそが尽きた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
与える食物は取らないけれど、その温順であるらしいことが、いくらかの心恃こころだのみにはなっていただけであります。
お銀様はこちらにあって、そのことを心恃こころだのみにしていると、しばらくあって、畳ざわりの音が軽いながら入乱れて、どやどやと、この座敷めがけて続いて来る。
それは、弁信が附いて行くことが何となしに心恃こころだのみになるし、それと、今宵に限って竜之助が、身に寸鉄を帯びずして出て行くということに安心したものと見えます。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いや、山科へ来たからといって、別に心安いところもないがな、関の大谷風呂へ少し厄介になったことがあるから、もう一晩、あそこへ泊めてもらおうかと、それを心恃こころだのみにして来たまでだ」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)