心安立こころやすだ)” の例文
今までの調子で心安立こころやすだてに、殿様のお邸なんぞへ無暗にやって来られては困ることもあるから、そこは遠慮をしておいておくれ
「氷峰だツて、今窮してゐるから、ね。」義雄は、心安立こころやすだてに、暗にメール社でもツと奮發すべきだといふことをふうじかけた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
木村から頼まれて私の世話を見てくださった倉地という事務長のかたもそれはきさくな親切な人じゃありますけれども、船で始めて知り合いになったかただから、お心安立こころやすだてなんぞはできないでしょう。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しかつめらしい顔をして心にもない事を誠しやかに説いていると、えらくあましるが吸えるものと見えるなあ。別に悪意がある訳ではなく、心安立こころやすだてからのいつもの毒舌だったが、子路は顔色を変えた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
もしや、心安立こころやすだてにかおを合わせることがいとぐちとなって、退引のっぴきならぬこんがらかりに導いた日には、取っても返らないではないか。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして葉子を見ると心安立こころやすだてに無邪気にほほえんで見せたりした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
米友は案外なかおをして仲間体の男を見ますと、その仲間体の男は、心安立こころやすだてにズカズカと火の傍へ寄って来て
こう心安立こころやすだてに話し出されては、全くやりきれない、それでも北原さんでよかったと、お雪は傍から、やっと胸を撫で下ろしていると、その頼みきった北原が、案外に気色けしきばんできました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
多分心安立こころやすだての仲間うちが来たものと思ったのでしょう。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)