御託ごたく)” の例文
今や國事は日々に多端で三文文士の御託ごたくを聞くよりも一人でも多くの實際家を必要として居る。思想界の如きは少數の天才肌の人に任せて置けば宜しい。
などと御託ごたくをならべたものの、予は遂に矢つぱり病人に違ひない。これだけ書いてもう額が少し汗ばんで來た。
郁雨に与ふ (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
今ではもう俺を敬遠しかけている辯護士を捉まえて御託ごたくを並べたりしているが、そのじつおれは、ただ事件の運びの邪魔をしているのにすぎないのじゃあるまいか
「なんだ。おやじと、おふくろのことか。お釈迦しゃかなんぞも、知れ切った御託ごたくしか並べやしねえ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ざまあ見やがれ、畜生! 御託ごたくをならべるのはいいが、このとおり形なしじゃあねえか」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
アルカージナ (カッとして)また例の御託ごたくが始まった! そんならよござんす、わたし今日すぐモスクワへ帰るから。村へ行って、馬をやとってくるよう言いつけてください。
うぬが土百姓の分在で、利いた風な御託ごたくを並べやがる。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「お爺さん、御託ごたくはそれでおしまいかね」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おまけに、縄までかけて渡してやるんだ。もったいねえ御託ごたくをいうな——という鼻息。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たった今、その豆蔵まめぞうをよこしやがって、うるせえとか、やかましいとか、きいたふうな御託ごたくを並べやがったが、うるせえな博労の地がねだ。ここは殿様旅籠はたごじゃねえぞ、博労の多い博労宿だ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)