御藤おふじ)” の例文
そこにまた御藤おふじさんという娘があって、その人の容色きりょうがよくうちのものの口にのぼった事も、まだ私の記憶を離れずにいる。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御藤おふじさんは昔健三に向って、自分の夫を評するときに、こんな言葉を使った。世の中をまだ知らない健三にもその真実でない事はよく解っていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし最も悪いのは御藤おふじさんであった。「あいつが」とか「あの女が」とかいう言葉を使うとき、御常は口惜しくって堪まらないという顔付をした。眼から涙を流した。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何でも金鵄勲章きんしくんしょうの年金か何かを御藤おふじさんがもらってるんだとさ。だから島田もどこからか貰わなくっちゃ淋しくって堪らなくなったんだろうよ。なんしろあの位慾張よくばってるんだから」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)