御留守おるす)” の例文
「早く君に安心させようと思って、草山ばかり見つめていたもんだから、つい足元が御留守おるすになって、落ちてしまった」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この期間は日本最近の一世紀と同じく、外国の文学に心を傾け過ぎて、国語の変遷を御留守おるすにした時代であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
わたしはやむを得ず俯向うつむいたなり、御留守おるすあいだ出来しゅったいした、いろいろの大変を御話しました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
敬太郎は「ええちょっと見てもらいたいんだが、御留守おるすのようですね」と云った。すると婆さんは、ひざの上のやわらか物をすみの方へ片づけながら、御上りなさいと答えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つまり一般の人間の徳義的感覚が鈍くなるから、作家批評家の理想も他の方面へ走って、こちらは御留守おるすになる。ついに善などはどうでも真さえあらわせばと云う気分になるんではありますまいか。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大變たいへん御靜おしづかやうですが、今日けふはどなたも御留守おるすなんですか」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)