御仮屋おかりや)” の例文
旧字:御假屋
御仮屋おかりやは新しい平張ひらばりで、正面に紫の幕、緑の机掛、うしろは白い幕を引廻し、特別席につづいて北向にうまや、南が馬場でした。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
姉の背に突き立っている短刀を引抜いて追っかけ、御仮屋おかりや横町でお滝に追い付いて、物をも言わずに後ろから刺し、そのまま逃げて帰ったところへ父親が来たのだろう。
取壊とりくずさずにある御仮屋おかりやも潜み、うまやも隠れ、鼻の先の松は遠い影のように沈みました。昨日の今日でしょう、原の上の有様は、よくも目に見えないで、見えるよりかも反って思出の種です。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
はかまをつけたままの改まった心持ちで、山吹村追分おいわけ御仮屋おかりやから条山神社の本殿にうつさるるという四大人の御霊代みたましろを想像し、それらをささげて行く人のだれとだれとであるべきかを想像した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御仮屋おかりやの前のうまやには二百四十頭の牝馬めうまつないでありましたが、わけても殿下の亜剌比亜アラビア産にめあわせた三十四頭の牝馬と駒とは人目を引きました。この厩を四方から取囲とりまいて、見物が人山を築く。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)