影向ようごう)” の例文
美術の淵源地えんげんち、荘厳の廚子ずしから影向ようごうした、女菩薩にょぼさつとは心得ず、ただ雷の本場と心得、ごろごろさん、ごろさんと、以来かのおんなを渾名あだなした。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
環境的にはそこはかとなく法然ほうねんや親鸞の影向ようごうを自然に少年から受けていたとおもっています。
親鸞の水脈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右の千手崎せんじゅがさきは延暦三年四月に勝道上人しょうどうじょうにんが湖上[中禅寺湖の]で黄金の千光眼せんこうがん影向ようごうを拝し玉ひしゆゑ爰に千手大士を創建そうこんし玉ひ補陀楽山千手院ふだらくさんしんじゅいんと名付玉ふたといふことである。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
鬼神力が三つ目小僧となり、大入道となるように、また観音力の微妙なる影向ようごうのあるを見ることを疑わぬ。
かねて信心渇仰の大、大師、弘法様が幻に影向ようごうあった。灸点きゅうてんの法を、その以心伝教で会得した。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
トこの天窓の上へ、艶麗あでやかに立たれた時は、余り美麗で、神々しくッて、そこいらのものの精霊が、影向ようごうしたかと思いましたて。桜の精、柳の精というようにでございますな。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さりながら、縁日の神仏は、賽銭さいせんの降る中ならず、かかる処にこそ、影向ようごうして、露にな濡れそ、夜風に堪えよ、と母子おやこの上に袖笠して、遠音に観世ものの囃子はやしの声を打聞かせたまうらんよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)