強靭きやうじん)” の例文
平次の強靭きやうじんな記憶力は、日本橋本銀町の淺田屋——江戸長者番附の小結どころに坐る大店の騷動を忘れてゐる筈もなかつたのです。
つまり戰爭は、決して自分たちの精神に傷を與へはしなかつた。かへつて自分たちの皮膚を(面の皮もろとも)強靭きやうじんにした。傷つかぬ魂が、強靭な皮膚に包まれてゐるのだ。一種の不死身である。
きりやうも滿更でないのが、何だつて馬鹿/\しく強靭きやうじんな舌を持つて生れたことだらうと、平次は氣の毒にさへなるのでした。
長い間輕業小屋できたへた強靭きやうじんな身體と、恐ろしい氣轉とで、ともすれば平次と八五郎の手をまぬれて逃出さうとしましたが、久し振りに錢形平次の掌から投げられた五六枚の錢に
平次は手品つかひの口上のやうな事を言ふと、輪鍵にくゞらせた馬の尾が外の釘穴からの操作で、スルスルと動いたと思ふと、なんの不都合もなく、細くて強靭きやうじんな紐に代りました。
氣が付いて見ると、槍の目釘の穴には、強靭きやうじんな細い紐が結んであり、その紐に引かれて、槍の穗は欄間の蔀に引きあげられ、やがて其處から手が出て、器用に外へ引出してしまひました。
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
ほんの五六尺の麻繩あさなはですが強靭きやうじんたくましくて、これは全く物凄いものです。