引撲ひっぱた)” の例文
私のこんな了簡りょうけんじゃ、舞台に立てば引撲ひっぱたかれるし、謡の出稽古はしたくなし、……実は、みっしり考えようと思ってね、この墓所へ逃込んだんだが。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
縛られるももと/\覚悟だし、引撲ひっぱたかれて骨がくじけてもいと思って、蚊にさゝれるも毒虫に喰われるも我慢しましたが、蛇が出やアしないかと本当にそればかり心配しましたが
舞台だけの役者だって、私は、兄さんの羽衣とかの天人の顔を見ているより、青めりんすを引撲ひっぱたくか、駢指の講釈を聞く方がどんなに嬉しいか知れやしない。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何だか、妹の事なり、何なり、誰かに引撲ひっぱたかれそうな気がしてならなかったからね。——一体、女形の面裡めんうちからものが見えるッて事はないのに、駢指むつゆびが真向うへ立ったんだ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)