旧字:弓張提燈
お常婆は雨の降りしきる或晩、弓張提灯ゆみはりぢやうちんなど勿体もつたいらしくつけて、改まつて家へ来た。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
長吉ちやうきちは覚えずあとを追つて路地内ろぢうち這入はいらうとしたが、同時に一番近くの格子戸かうしど人声ひとごゑと共にいて、細長い弓張提灯ゆみはりぢやうちんを持つた男が出て来たので、なんふ事なく長吉は気後きおくれのしたばかりか
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)