庖丁ばうちやう)” の例文
「そんな引つ掻き見たいなものぢやありませんよ、匕首あひくちのみか出刄庖丁ばうちやうか知らないが、一、二寸は突つ立つてますぜ」
その眞下ましたに、魚屋さかなやみせがあつて、親方おやかた威勢ゐせいのいゝ向顱卷むかうはちまきで、黄肌鮪きはだにさしみ庖丁ばうちやうひらめかしてたのはえらい。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中は血の海、文字花は自分の居間で、出刄庖丁ばうちやうで喉をゑぐられ、虚空を掴んで死んで居たのです。側で逃出すことも出來ず、たゞウロ/\と泣いて居る少女に訊くと
人切庖丁ばうちやうを二本腰にさして百姓や町人を見下ろして歩くあの威張り腐つた樣子からして野暮で武骨で圖々しくて我慢が出來なかつたのです——お母さんにお願ひしても
「切れさうもない菜切庖丁ばうちやうが一丁あるだけ、さう/\見事な懷中煙草入がありましたよ。かますの中には、國分の上等が少々、多分山之助のものでせうが、少し贅澤ですね」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「だから起きるから寢るまで、人斬庖丁ばうちやうを傍から離せなくなる」