平仮名ひらがな)” の例文
僕は実は平仮名ひらがなには時時ときどき形にこだはることがある。たとへば「て」の字は出来るだけ避けたい。殊に「何何して何何」と次に続けるのは禁物きんもつである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
母は平仮名ひらがな以外、ほとんど文字というものを書いたことがなかった。しかし耳学問はかなりに出来ていた。
私の母 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
汁粉屋の茶碗というけれども、さすがに維新前に出来たものだけに、やきくすりも悪くない。平仮名ひらがなでおてつと大きく書いてある。私は今これを自分の茶碗につかっている。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かく定義を下せば、すこぶる六つかしけれど、是を平仮名ひらがなにて翻訳すれば、先づ地震、雷、火事、おやぢの怖きを悟り、砂糖と塩の区別を知り、恋の重荷義理のしがらみなどいふ意味を合点がてんし、順逆の二境を踏み
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)