常葉ときわ)” の例文
そのあいだに、常葉ときわの局は、唐団扇からうちわで横からりょうを送り、百合殿ノ小女房は、天目台てんもくだいにのせたお薬湯のわんをすすめた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
橘平から望月沢のあたり、ようやく常葉ときわ木が増して、山深い香りがする。下生えの馬酔木の小枝にまで霧藻がもつれ、岩うちわが岩間に錆色の厚葉を光らせる。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
美濃稲葉郡常葉ときわ村大字椿洞字貢毛
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
……むつらの御方おんかた、おさいつぼね百合殿ゆりどのの小女房、常葉ときわの局など、なぐさめてもなく、とり乱している。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、中御所へは、一族の名越、普恩寺ふおんじ、赤橋、大仏おさらぎ、江馬、金沢、常葉ときわなどの、日ごろには営中に見えない門族の顔やら、四職の閣老すべて、高時の台下に、席次ただしくつめかけていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高時をつつむ、一門眷属けんぞく甲冑かっちゅうから、常葉ときわノ局やおさいの局や、また春渓尼の姿もそのなかに交じって見える。そしてこのときまだ、武士千余人はいたはずであるが、はやくも混雑まぎれに
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)