巨椋おぐら)” の例文
巨椋おぐらの池の堤に出たときは、戦場の銃声も途絶えて、時々思い出したように、大砲おおづつの音がかすかにきこえてくるだけだった。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
巨椋おおくらの入江は山城久世郡の北にあり、今の巨椋おぐら池である。「射部人いめびと」は、鹿猟の時に、隠れ臥して弓を射るから、「伏」につらねて枕詞とした。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それであなたが少年のころお父上につれられて巨椋おぐらの池の別荘のまえをさまよってあるかれたわけは合点がてんがゆきました
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
日本では、上記の小岩村での発見後、それが利根川流域の地に産することが明らかとなり、更に大正十四年一月二十日に山城の巨椋おぐら池でも見出された。
ムジナモ発見物語り (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
それと、もう一つ——京都の巨椋おぐらの池で、鳥を撃ったものがある。ここは伏見奉行の管轄で、御禁猟地になっている。いまだかつて何ものも、この辺で発砲を試みた無法者はない。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
泉水のおもてには月があかるく照っていましてみぎわに一そうの舟がつないでありましたのは多分その泉水は巨椋おぐらの池の水を
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なんでもお遊さんが来てくれたら伏見のたななどへはおいておかない、巨椋おぐらの池に別荘があるのを建て増してお遊さんの気に入るような数寄屋普請すきやぶしんをして住まわせる
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)