峭壁しょうへき)” の例文
不動瀑布は殷々いんいんとして遠雷のような音をたてているが、断崖峭壁しょうへき囲繞いにょうされているのでその本体を見ることが出来ぬ。
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
武尊ほたか山の峭壁しょうへきに住んでゐた野猿を猟師から買ひ受け、その唇を味噌煮にこしらへて食べたことがあるが、軽い土臭と酸味を持つてゐて、口では言ひ現せぬ魔味を感じたのであつた。
たぬき汁 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
わたしはだいたいこういう景のところであろうとつねから考えていたのである。それは峨々ががたる峭壁しょうへきがあったり岩を奔湍ほんたんがあったりするいわゆる奇勝とか絶景とかの称にあたいする山水ではない。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
裏日光、八千尺の太郎山の峭壁しょうへきにらんで釣る姿、寂しさそのものであると思う。
雪代山女魚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)