岳父しゅうと)” の例文
岳父しゅうとのくる時期でもないし、それに前触れもなかったので南は思いもよらなかった。南はあたふたと起って迎えた。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女房はまだ部屋住でいた時に迎えて、もう子供が二人ある。里方は深川木場の遠州屋太右衛門である。しかし女房も岳父しゅうともただ手をつかねて傍看する外無かった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ところへまた、楊雄の岳父しゅうとはんの爺さんというのが、これへ馳けつけてきた。娘聟むすめむこの一大事と聞いて、近所合壁がっぺきの加勢を仰いで飛び出して来たのだが、わけを聞いて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同で選挙した団長が日露役の志士沖禎介おきていすけの親父さんで、一等船客の中には京大教授の博士もいれば、木下杢太郎きのしたもくたろう岳父しゅうとさんもいる。中学校長もいれば有名な富豪もいる。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「てまえは、臥龍の岳父しゅうと黄承彦こうしょうげんというものじゃが……して、あなた様は?」と、怪訝いぶかった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おとなしい娘を手に入れることが出来るのかと心中ひそかに喜んだのだが、それ程物堅い親子がそろって来るとなると、松源での初対面はなんとなく壻が岳父しゅうと見参げんざんすると云う風になりそうなので
(新字新仮名) / 森鴎外(著)