居周囲いまわり)” の例文
旧字:居周圍
はじめは押入と、しかしそれにしては居周囲いまわりが広く、破れてはいるが、むしろか、畳か敷いてもあり、心持四畳半、五畳、六畳ばかりもありそうな。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時分、増上寺の坊さんは可恐おそろしく金を使ったそうでね、怪しからないのは居周囲いまわりの堅気の女房で、内々囲われていたのさえ有ると言うのさ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……その日は霜が消えなかった——居周囲いまわりの細君女房連が、湯屋でも、髪結かみゆいでもまだ風説をたやさぬ、お稲ちゃんと云った評判娘にそっくりなのであった。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それこそ、鳴く虫か小鳥のように、どれだけ今戸のあたり姉の妾宅の居周囲いまわりを、あこがれて徉徊さまよったろう、……人目を忍び、世間を兼ねる情婦いろででも有るように。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
閃々きらきらと金糸のきらめく、美しいひとの半襟と、陽炎に影を通わす、居周囲いまわりは時に寂寞ひっそりした、楽屋の人数にんずを、狭い処に包んだせいか、張紙幕びらまくが中ほどから、見物に向いて、風をはらんだか
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)