寸断々々ずたずた)” の例文
もうもうこらえきれないという御様子で、突然いきなり、奉書を鷲掴わしづかみにして、寸断々々ずたずたに引裂いて了いました。啜泣すすりなきの涙は男らしい御顔を流れましたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今こそ爾を思ひのままに、肉を破り骨を砕き、寸断々々ずたずたに噛みさきて、わが意恨うらみを晴らすべきぞ。思知つたか聴水
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
といいながら、あたかも、箕島に復讐するかのように、ナイフをもって、肝臓や脾臓を寸断々々ずたずたに切りました。
稀有の犯罪 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
天守の千畳敷へ打込んだ、関東勢の大砲おおづつが炎を吐いて転がる中に、淀君をはじめ、夥多あまたの美人の、練衣ねりぎぬくれないはかま寸断々々ずたずたに、城と一所に滅ぶる景色が、目に見える。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)