“宏(ひろ)” の例文
イシカリの大きな原野が、宏(ひろ)い空と呼応して吹雪きだしたのであった。野におりた烈しい風は、駚(はし)るにつれて速度と圧力をたかめていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
どこか、今までの彼の相(すがた)に、無碍(むげ)の円通が加わってきた、自由さ、明るさ、宏(ひろ)さである、一日ごとが、生きがいであった。生きているよろこびであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秋森(あきもり)家というのは、吉田雄太郎(よしだゆうたろう)君のいるN町のアパートのすぐ西隣にある相当に宏(ひろ)い南向きの屋敷であるが、それは随分と古めかしいもので処まんだらにウメノキゴケの生えた灰色の甍(いらか)は
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
こういう静けさとこういう宏(ひろ)さのなかで、彼らは思わず、点描にも及ばぬ自分の姿を思い描くのである。面を伏せたような佗(わび)しいものに捕われる。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)