安藤坂あんどうざか)” の例文
安藤坂あんどうざかは平かに地ならしされた。富坂とみざか火避地ひよけちには借家しゃくやが建てられて当時の名残なごりの樹木二、三本を残すに過ぎない。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
丁度この見晴しと相対するものはすなわち小石川伝通院でんづういん前の安藤坂あんどうざかで、それと並行する金剛寺坂こんごうじざか荒木坂あらきざか服部坂はっとりざか大日坂だいにちざかなどは皆ひとしく小石川より牛込赤城番町辺あかぎばんちょうへんを見渡すによい。
三時の茶菓子おやつに、安藤坂あんどうざか紅谷べにや最中もなかを食べてから、母上を相手に、飯事ままごとの遊びをするかせぬうち、障子に映るきいろい夕陽の影の見る見る消えて、西風にしかぜの音、樹木に響き、座敷の床間とこのまの黒い壁が
(新字新仮名) / 永井荷風(著)