娼楼しょうろう)” の例文
浮世絵における和蘭画オランダが幾何学的遠近法の応用は既に正徳しょうとく享保頃に流行せし劇場内部の光景または娼楼しょうろう大広間見通しの図等においてこれを見たりしといへども
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大鳥居をくぐったところに、五六軒の娼楼しょうろうが軒をならべ、遊覧地だけに、この土地よりも何か情緒じょうしょがあるように思われ、そんな話をしてから、風呂ふろへ行ったのだったが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
帰りに四馬路スマロという道を歩く。油絵の額を店に並べて、美しく化粧をした童女の並んでいる家がところどころにある。みんな娼楼しょうろうだという。芸妓げいぎ輿こしに乗って美しい扇を開いて胸にかざしたのが通る。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
娼楼しょうろう劇場の内外ないがいまたは忠臣蔵曾我十番切そがじゅうばんぎりならびに諸国の名所神社仏閣の図等を描きたるものにして
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
吉原田圃の全景を眺めるには廓内京町かくないきょうまち一、二丁目の西側、お歯黒溝はぐろどぶに接した娼楼しょうろうの裏窓が最もそのところを得ていた。この眺望は幸にして『今戸心中』の篇中にくわしく描き出されている。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)