姉弟きやうだい)” の例文
いや、いや、さう言はれると痛み入ります。私だつて、何も、君たち姉弟きやうだいを嫌つてゐるわけではないのです。殊に、これからは君を
清貧譚 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
兩親ふたおやに早く死別れてつた二人の姉弟きやうだいですから互に力にして居たのが今では別れ/\になつて生死いきしにさへ分らんやうになりました。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
その時わたしはまだ十三、そなたは十一で碌々に物心もつかず、唯おろおろと途方にくれて、姉弟きやうだい手を取つて泣いてゐた。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
一體、私は七人の姉弟きやうだいのうちで一番の末の弟で、私の直ぐ上が銀さん、それから上に二人姉があつたさうですが、斯の人達は幼少ちひさくて亡くなりましたさうです。
併し私達は、名所旧蹟を見物するよりも、かうして二人連れで互に身の上話をしながら歩いてゐるのが楽しかつた。孤児みなしごの子供の姉弟きやうだいが知らぬ他郷に漂浪さすらふやうに——。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
ゆき子が、仏印行きの決心を固めたのも、かうした不倫から自分を抜けきりたい気持ちで、事がきまるまでは、伊庭夫婦にも、静岡の母にも、姉弟きやうだいにも打ちあけなかつたのだ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
唐物屋の頭禿げし亭主の顏今も忘れず、繪草紙賣る店に屡々通ひしも事實なれど、その他の人はお鶴はもとより煙草屋の姉弟きやうだいも皆我がほしいままに描き出せる架空の人物に過ぎざるなり。
それで堪忍がなるほどなら、けふまで泣いて暮らしはせぬ。廿歳はたちを越しても齒を染めぬ姉の覺悟をなんと見た。姉弟きやうだいが心ひとつにして、馬盜人のかたきの奴めを……。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
七人あつた姉弟きやうだいのうち姉は一番の年長者、私はまた一番末の弟にあたります。
ふと乘合せた電車の中の姉弟きやうだいの、その境遇性格、全生涯迄も、僅に數頁の文字の中に暗示されてゐるばかりで無く、もつと廣い人間社會が、その背後に横たはる事さへ歴然と示されてゐるのである。