妖怪おばけ)” の例文
宛然さながら厚化粧した様になつて、黒い歯の間の一枚の入歯が、殊更らしく光つた。妖怪おばけの様だと言つて一同みんながまた笑つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
こんな気味のわるい、妖怪おばけでも出て来そうな森の中へ、たった一人で、どうして来たのかしらん……と気が付くと、思わずゾッとして首をちぢめました。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼女が下り立ち、黒い妖怪おばけの屋根々々を取払ふのを。
と云う女将おかみらしい声がして、コック部屋兼帳場の入口の浅黄色の垂幕の蔭から、色の青黒い、まなじりの釣上った、ヒステリの妖怪おばけじみた年増女の顔が覗いたと思うと
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まったく……まだ五時だってえのに電燈でんきけなくちゃ物が見えねえなんて……店ん中に妖怪おばけでも出そうで……もっとも古本屋なんて商売は、あんまり明るくちゃ工合が悪う御座いますナ。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「怪談怪談。妖怪おばけエー……キャアッと来そうだね」
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)