奇巌きがん)” の例文
道路だけは立派に作ってあるが、一歩鋪装ほそう道路をはずれると、暗黒の密林、あるいは熱砂の沙漠さばく、または奇巌きがんの岩原である。
日本のこころ (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
まさしく瑠璃るりの、群青ぐんじょう深潭しんたんようして、赤褐色の奇巌きがん群々むれむれがかっと反射したところで、しんしんとみ入るせみの声がする。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
それとも、教坊の陰気臭さが、奇巌きがん珍石に奥まられた、岩狭はざまやみがそれであろうか。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
山門の前を流るる渓流は、その水清きこと水晶のごとく、奇巌きがん怪石の間を縫うて水流の末はここから三里半ばかり、黒羽の町はずれを通っていると聴くので、足の重くてたまらぬ吾輩は一策を案じ出し
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)