夜半比よなかごろ)” の例文
鶴岡つるおかの城下に大場宇兵衛おおばうへえという武士があった。其の大場は同儕なかまの寄合があったので、それに往っていて夜半比よなかごろに帰って来た。北国でなくても淋しい屋敷町。
葬式の行列 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
伊勢参宮から帰りかけた長者の一行は、ある夜半比よなかごろ手結山ていやまと云う山坂やまさかの頂上にかかりました。手結から浦戸へは五里位しかないから、夜路よみちをしたものと見えます。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
新一はその晩もついすると怪しいものが来るかも判らないと思って、夜着の下に短刀を隠しながら一方母親の容子に注意していたが、夜半比よなかごろになるとつい睡ってしまった。
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
こうして数日すぎたところで、夜半比よなかごろになって玉音が急に苦しみはじめた。一所いっしょに寝ていた名音は驚いてび起きた。玉音は両手で虚空こくうつかみ歯を喰いしばって全身を痙攣けいれんさせた。
法華僧の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夜半比よなかごろにくるということでございます」
殺神記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)