塩谷えんや)” の例文
旧字:鹽谷
そもそも兼好けんこうほどの剛の者がついておりながら、高武蔵守師直こうのむさしのかみもろなお塩谷えんやの妻でしくじったのも、短気から——すべて色事には短気がいちばんの損気。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
或日、塩谷えんや判官高貞が良馬竜馬を禁裡に献上したことがあった。天皇は之を御覧じて、異朝は知らず我が国に、かかる俊馬の在るを聞かぬ、其の吉凶如何いかにと尋ねられた。
四条畷の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
其の時菊五郎はおいわ田宮たみや若党わかとう小平こへい、及び塩谷えんや浪人佐藤与茂七さとうよもしちの三役を勤めたが、お岩と小平の幽霊は陰惨を極めたもので、当時の人気に投じて七月の中旬から九月まで上演を続けた。
幽霊の衣裳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
仏頂寺は、高師直こうのもろなお塩谷えんやの妻からの艶書でも受取った時のように手をわななかせて、その胴巻を鷲掴わしづかみにすると、両手でみくちゃにするようなこなしをして
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)