堂摺連どうするれん)” の例文
「二郎はまるで堂摺連どうするれんと同じ事だ」と父が笑うようなまたたしなめるような句調で云った。母だけは一人不思議な顔をしていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山の手は書生さんの縄張りで例の堂摺連どうするれんという名物の発生したのが二十三、四年頃のこと、これがまた大いに景気を煽った。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
いつも夜店のにぎわ八丁堀北島町はっちょうぼりきたじまちょうの路地には片側に講釈の定席じょうせき、片側には娘義太夫むすめぎだゆうの定席が向合っているので、堂摺連どうするれん手拍子てびょうしは毎夜張扇はりおうぎの響に打交うちまじわる。
時の進むことの早さ、綾之助の堂摺連どうするれんはみんな紳士中産階級以上の人になり、時世の潮流もおしなべて向上した。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
さながら娘義太夫たれぎだ堂摺連どうするれんのように四方八方から詰め寄られて、さすが警保局長も哀れはかなく見えた時、この騒動にピリオドを打つように、けたたましく卓上電話のベルが鳴り出した。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
綾之助党は三田の慶応義塾と芝の攻玉舎こうぎょくしゃの生徒が牛耳ぎゅうじをとっていた。それが今日の堂摺連どうするれんの元祖である。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)