城寨とりで)” の例文
兄の正行が出陣の折、吉野の仮宮まで、行を共にして、そこから別れて城寨とりでへ帰って来た三男の正儀は、戻るとすぐ、母の居間に姿を見せて
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城寨とりでの山々は急に湖のような寂寞しじまになっていた。跫音あしおともさせぬ静かな一すじの列が、水の流るるように、総門のほうからここへ上って来るのが見えた。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この夏頃から、丞相には、渭水の北に城寨とりでを築こうとなされているらしいが、なぜ火水ひみずついえぬ城をお造りにならぬかと、愚案を申しあげに来ましたのじゃ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとまた、その人数の大部分、およそ二千余騎の兵が、一様に城寨とりでから出払って、急に、東条、龍泉寺りゅうせんじ、赤坂の一帯が、人まばらになったのを見た朝のことである。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)