おくび)” の例文
刺身は調味つまのみになッておくび応答うけこたえをするころになッて、お政は、例の所へでも往きたくなッたか、ふとッて坐舗ざしきを出た。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
家で知ってる人なぞは、元はれっきとしたばくち打ちだったらしいが、おくびにもそんな処は出さねえぞ。おやおや、この人達は土足であがりやがって。まあ呆れ返った。
沓掛時次郎 三幕十場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
しみじみと身に染みるもの、油、香水、痒ゆきところに手のとどく人が梳櫛すきぐし。こぼれ落ちるものは頭垢ふけと涙、湧きいづるものは、泉、乳、虱、接吻くちづけのあとのおくび、紅き薔薇さうびの虫、白蟻。
第二真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
但し此事は松太郎に對しておくびにも出さなかつた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
但し此事は松太郎に対しておくびにも出さなかつた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)