喘息病ぜんそくや)” の例文
旧式の機関車がその道路の真中に立ちはだかって、老いぼれの喘息病ぜんそくやみみたいに、ゼーゼーと白い息を吐いている。市外の、ここは場末のどん尻だ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
語勢に力を付けたはずみにたんがつかえたのでもあろうか、喘息病ぜんそくやみのように咽喉のどの奥をぜい/\鳴らして息を入れた。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
喘息病ぜんそくやみの父親と二人の小さな妹、それらの生活が母親だけにかかっていた。仕事といわれるかどうか知らないが、母親は早朝からのふき豆売り、そして夕方はうどんの玉をあきなった。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ふすま越しに、やがて叔父の松尾要人かなめの声がする。喘息病ぜんそくやみらしい咳声しわぶきと、感激のない呟きを聞くと、武蔵はまた、ここの家庭の持つ冷たい壁を感じて、隣の部屋でもじもじしていた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心臓が胸の中で狂気の様におどり廻っていた。咽喉のどはカラカラに渇いて、ヒューヒューと喘息病ぜんそくやみみたいな音を立てた。彼はもう、何の為に走らねばならぬのか、最初の目的を忘れて了っていた。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)