唐艸からくさ)” の例文
或日室生は遊びに行つた僕に、上品に赤い唐艸からくさの寂びた九谷くたにの鉢を一つくれた。それから熱心にこんなことを云つた。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
唐艸からくさ模樣のやうな、文字のやうな、どうかしたら、若い時言ひ交した、女の名前だつたかも知れません」
わたしは唐艸からくさ模様の外套を羽織つて
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
彼はその夕明りの中にしみじみこの折目のついた十円札へ目を落した。鼠色の唐艸からくさや十六ぎくの中に朱の印を押した十円札は不思議にも美しい紙幣である。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしだんだん近寄つて見ると、——僕のタクシイのへツド・ライトがぼんやりその車を照らしたのを見ると、それは金色きんいろ唐艸からくさをつけた、葬式に使ふ自動車だつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
するとあの唐艸からくさをつけた、葬式に使ふ自動車が一台、もう一度僕のタクシイの前にぼんやりと後ろを現し出した。僕はまだその時までは前に挙げた幾つかの現象を聯絡れんらくのあるものとは思はなかつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)