唐墨からすみ)” の例文
台湾名物唐墨からすみ下され、有難く存上ぞんじあげ候。酒伴の最好物に候。私事十六日上総へまゐり、昨夜帰宅仕候。取りあへず御挨拶迄ごあいさつまで、拝具。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
箱入の唐墨からすみがある。雌黄しおうなんどの絵具類をまとめた袱紗包ふくさづつみがある。そんなものが匣の大半を埋めていて、その上積うわづみのようになって、やや大型の女持の懐中物かいちゅうものがある。
左衛門町の夫婦は別れを惜しんで、餞別せんべつのしるしにと半蔵の前にさし出したのは、いずれも旅の荷物にならないような、しかも心をこめたものばかりであった。多吉からは黄色な紙に包んである唐墨からすみ
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)