哀号あいごう)” の例文
旧字:哀號
男は哀号あいごうして命乞いの必死をみせた。泣いていうには、ことし九十になる老母がおり、老母を養うための出来心であったと口説くどく。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
打てば血が流れ、その哀号あいごうの声はあたりの森に木谺こだまして、凄惨実にたとえようもなかった。
ただちにを発し、泊中の者は頭巾に喪章もしょうをつけ、また宛子台えんしだいの上には黒い喪旗もきが掲げられ——一山、哀号あいごうのうちに沈みきった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗治の犠牲によって、はからずも自分たちのその命が救われたことを狂喜した哀号あいごうでもなかった。彼らはそれほど利己でもない無情でもない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蔡和は、哀号あいごうして、甘寧かんねい闞沢かんたくも自分と同腹なのに、自分だけを斬るのはひどいと喚いたが、周瑜は笑って
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船も装備もみな失い、あげくに、指揮者黄安も賊に生け捕られ、散々なていで済州さいしゅうへ逃げ帰った官兵は、ただ事の顛末てんまつを奉行所の門へ哀号あいごうし合うだけだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袁紹も怒って、田豊を血祭りにせんと猛ったが、諸人が哀号あいごうして、助命を乞うので
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明のが報じられて、成都宮の内外は、哀号あいごうの声と悲愁の思いに閉じられ、帝劉禅りゅうぜんも皇后も日夜かなしみ嘆いていた折なので、この直後の変に対しても、いかに裁いてよいか、判断にも迷った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)